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【自社株買いは買いか?】東宝(9602)

映画

直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから情報・通信業種の東宝です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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「自社株買い」とは?

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

【自社株買いのメリットデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。
    (配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買い発表日2022年7月12日(火)
取得期間2022年7月13日~ 9月30日
取得株式の総数普通株式 100 万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:0.57%
取得金額の総額60 億円(上限)
※取得株数の上限で割ると1株あたり6,000円換算
取得方法①自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による買付
②取引一任契約に基づく立会取引市場における買付
表1:東宝 自社株買い概要

【自社株買いを行う理由】

としています。

自己株式の取得数量は、発行済み株式総数(自己株式を除く)の0.57%と自社株買いの数量としては少ない数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

ただし、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による買付を7/13(水)に、57万株、28.3億円分実施済みですので、

残りは43万株(上限)、31.7億円(上限)となっています。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は5,534百株、25日平均は3,490百株で、流動性は高い水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

「健全な娯楽を広く大衆に提供すること」を使命として設立されて以来、

映画・演劇を中心に、幅広い層のお客様に夢や感動、喜びをもたらす数多くのエンタテインメント作品を届けている会社です。

直近では、「劇場版 呪術廻戦 0」「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」「シン・ウルトラマン」「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」など、

数々のヒット作品を生み出し、業績の好調に寄与しています。

事業の内容は、「映画事業」「演劇事業」「不動産事業」「その他事業」があり、

を行っています。

2022年2月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「映画事業」が6割強を占めています。

直近の経営概況

【2023年2月期1Q(2022年3月~2022年5月)の経営成績】

(2022年7月12日発表)

決算期営業収入
[億円]
(前年
同期比[%])
営業利益
[億円]
(同)
経常利益
[億円]
(同)
親会社株主
帰属する
純利益
[億円]
(同)
2022年2月期1Q累計578
(75.1)
105
(275)
108
(275)
66.8
(30.6倍)
2023年2月期1Q累計
※2
618
(ー)
142
(ー)
158
(ー)
115
(ー)
2023年2月期通期
会社予想 ※2
2,320
(ー)
380
(ー)
410
(ー)
285
(ー)
通期予想に対する
1Qの進捗率[%]
26.637.538.640.4
表2:東宝 2023年2月期1Q経営成績と通期会社予想
※2:「収益認識に関する会計基準」等を2023年2月期の期首から適用しており、2023年2月期1Q及び通期に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、対前年同四半期又は前期増減率は記載なし

表2の通り、会計基準が異なるので単純比較はできませんが、前年同期比 増収増益で、売上高は微増利益面は3割~7割程度の増益で好調です。

2023年2月期通期の業績予想は、こちらも単純比較はできませんが、前期比 増収減益で、売上高は微増利益面は微減を見込んでおり、

その通期予想に対する進捗率は1Q終了時点で、売上高は1/4程度でまあまあ利益面は4割程度で順調です。

【2023年2月期1Qの状況、経営成績の要因】

当1Q連結累計期間におけるわが国の経済は、持ち直しの動きがみられるものの新型コロナウイルス感染状況やウクライナ情勢の長期化などが懸念される中で、原材料価格の上昇など先行き不透明な状況が続いています。

このような情勢下にあって同社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大防止に努めながら、各事業において柔軟かつ機動的な営業活動をおこないました。

東宝㈱の配給において「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」「シン・ウルトラマン」等のヒット作品が業績に寄与しました。

これらの結果、表2の経営成績となりました。

また、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う大規模施設に対する協力金等を「助成金収入」として特別利益に計上しています。

また、創立100周年に向けた「長期ビジョン 2032」と今後3カ年の具体的な施策である「中期経営計画 2025」とから構成される「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」を本年4月に策定し、

持続的な成長と中長期的な企業価値向上に取り組んでいます

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

セグメント営業収入
[億円]
(前年比[%])
営業利益
[百万円]
(同)
映画395
(4.9)
9,230
(51.8)
演劇45.6
(58.1)
737
(52.4)
不動産174
(5.3)
5,913
(5.5)
その他2.9
(△53.3)
57
(前年同期
39百万円
の赤字)
表3:2023年2月期1Q  セグメント別業績

「その他事業」以外は、前年同期比 増収増益で、

特に「演劇事業」は5割強の増収増益となっており好調です。

セグメント別の状況は以下です。

映画事業

映画営業事業において、『劇場版 呪術廻戦 0』の続映に加え、『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』をはじめとする定番のシリーズアニメ作品や、

シン・ウルトラマン』、『SING/シング:ネクストステージ』等のヒットがあり、収益認識会計基準の適用により減収となったものの、大幅な増益

映画興行事業において、東京・関西圏の映画館の臨時休業があった前年同期に比べ事業環境が改善したことに加え、上記の東宝配給作品を中心としたヒットに恵まれたため、大幅な増収増益

映像事業において、「呪術廻戦」 「僕のヒーローアカデミア」「SPY×FAMILY」等のTOHO animation作品が、パッケージ販売、商品化ライセンス、動画配信等の多面的展開により好調に推移したものの、

前年に『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』のパッケージが大きなセールスを記録した反動で、前年同期比 減収減益

映画事業全体では、上記の要因により前年同期比 増収増益

演劇事業

公演の一部中止はあったものの、東宝創立90周年記念作品『千と千尋の神隠し』等が盛況に推移し、大幅な増収増益

不動産事業

不動産賃貸事業において保有物件が堅調に稼働したことに加え、

道路事業が好調な成績を収めたことにより、全体では増収増益

その他事業

東宝共榮企業㈱の「東宝調布スポーツパーク」やTOHOリテール㈱の劇場売店等において、様々な営業施策等を展開し、かつ採算性を勘案して営業活動を行った。

なお、TOHOリテール㈱は、2021年8月をもって直営飲食事業から撤退

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2023年2月期1Q末時点で78.7%と前期末(78.7%)から変わらずでした。

自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー>2023年2月期1Q累計キャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

 ※3 フリーCFの説明:

前期(2022年2月期)1Q累計のフリーCF(14,444百万円の収入)から6,912百万円減少しています。

営業活動によるCFの主な内訳(億円):

投資活動によるCFの主な内訳(億円):

【今期(2023年2月期通期)業績の見通し】

2022年4月12日付「2022年2月期 決算短信」において公表された内容に変更ありません

株価指標と動向

【2022/7/13(水)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、松竹(9601) 24.7倍、東映(9605) 21.4倍、カドカワ(9468) 34.5倍と比較すると、高めの水準です。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2018年2月期45
(内 特別配当
20円)
24.2
2019年2月期45
(内 特別配当
10円)
26.8
2020年2月期55
(内 特別配当
20円)
27.0
2021年2月期3542.4
2022年2月期45
(内 特別配当
10円)
26.9
表4:東宝 年間配当金推移

年利回りは0.75%で、東証プライムの単純平均 2.42%(7/12時点) と比較すると低い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり35~55円で推移しており、

特別配当分を除いた普通配当のみですと、2018年2月期は25円2019年2月期以降は35円が続いており、安定しています。

配当性向は、2021年2月期は40%強と高いですが、他の年は20数%と安定しています。

この会社は、

財務体質の強化と将来の資金需要に備えた内部留保を勘案しつつ、株主に対する利益還元の充実を図るため、年間配当金35円を基本的な水準に置きながら、

業績が予想や目標を上回って推移した場合には、業績連動分として追加の配当を積極的に検討していく方針としています。

また、中間配当と期末配当の年2回の配当を行うことを基本方針としています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、8月末と2月末の年2回、100株以上保有の株主は以下のものが進呈されます。

100株保有の場合、配当金+株主優待(1,900円相当×年2回=3,800円)で、利回りは1.48%になります。

こちらは、個人投資家にとってうれしい内容ですね。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、一昨年8月の安値(3,110円)から高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移し、昨年11月に高値(5,690円)をつけました。

しかしその後は調整し、現在は三角保合いで株価が収斂している状況です。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、高値切り上げ安値切り上げの上昇トレンドで推移していましたが、

今回の自社株買いと2023年2月期1Q決算発表の翌営業日(7/13)は、これを好感されて、窓を開けて出来高を伴い上昇し、前日比 305円高(+6.14%)と大幅高しました。

これで、6月につけた年初来高値を上抜いてきましたので、今後は、この高値をキープ上値追いするのか、減速して元の値に戻っていくのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・自社株買い数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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