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【自社株買いは買いか?】泉州電業(9824)

こんにちは!

直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?

足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから卸売業種の泉州電業です。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

「自社株買い」とは?

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

【自社株買いのメリットデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。
    (配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    • 自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    • 自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買い発表日2022年6月2日(木)
自社株買いを行う理由株主還元の充実
資本効率の向上
経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行するため
取得期間2022年6月3日~ 2022年10月31日
取得株式の総数普通株式 10 万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:1.11%
取得金額の総額6 億円(上限)
※取得株数の上限で割ると1株あたり 6,000円換算
取得方法東京証券取引所における市場買付
表1:泉州電業 自社株買い概要

自己株式の取得数量は、発行済み株式総数(自己株式を除く)の1.11%と自社株買いの数量としてはほどほどの数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は525百株25日平均は253百株で、流動性は低い水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

2019年に創立70周年を迎え、創業以来、電線総合商社として着実に成長してきた会社です。

事業内容は、

を主な内容とした事業活動を行っています。

2022年10月期2Q累計の商品別売上高構成比は、

で、「機器用・通信用電線」と「電力用ケーブル」を合わせて7割弱を占めています。

直近の経営概況

【2022年10月期2Q(2021年11月~2022年4月)の経営成績】

(2022年6月2日発表)

決算期売上高
[億円]
(前期比[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2021年10月期
2Q累計
429
(11.9)
1,905
(5.6)
2,090
(9.3)
1,442
(9.2)
2022年10月期
2Q累計
551
(28.3)
3,536
(85.6)
3,713
(77.6)
2,491
(72.7)
2022年10月期
通期会社予想
1,080
(16.8)
6,400
(34.9)
6,700
(33.9)
4,600
(28.4)
通期予想に対する
2Qの進捗率[%]
51.055.255.454.1
表2:泉州電業 2022年10月期2Q経営成績と2022年10月期通期予想

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は3割弱増利益面は7~8割程度の増益で好調です。

2022年10月期通期の業績予想は、今2Qの決算発表と同時に上方修正しており、前期比 増収増益で、売上高は2割弱の増収利益面は3割程度の増益を見込んでいて、

それに対する進捗率は、2Q終了時点で、売上高、利益面ともに5割超となっており順調です 。

【2022年10月期2Qの状況、経営成績の要因】

同社グループの係わる電線業界は、電線の主材料である銅の価格が、1トン当たり期中平均1,211千円と前年同期平均913千円に比べ32.6%上昇しました。

(銅価格の推移、1トン当たり期初1,170千円、安値1,120千円(2021年12月)、高値1,370千円(2022年4月)、第2四半期末1,320千円)

また、建設・電販向けの出荷量は、前年同期に比べ増加基調で推移しました。

このような情勢のもとで同社グループは、提案型営業の推進配送体制の強化新規得意先の開拓及び既存得意先の深耕新商品の拡販など積極的な営業展開を図りました。

また、更なる事業拡大を目的に、株式会社北越電研を2022年3月に完全子会社化しました。

その結果、当2Q連結累計期間の経営成績は、半導体製造装置向け需要の増大自動車・工作機械向け需要の回復、銅価格の上昇に伴い建設・電販向けの売上が増加したことにより、表2の前年同期比 増収増益の業績となっています。

【商品別の売上高】

商品別の売上高は表3のようになっています。

商品売上高
[億円]

(前年同期比
増減率[%])
機器用・通信用電線176
(31.4)
電力用ケーブル187
(30.0)
汎用被覆線51.3
(23.9)
その他電線27.1
(33.7)
非電線80.4
(29.6)
表3:2022年10月期2Q  商品別売上高

それぞれの商品で売上は、前年同期比 3割程度増加しています。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2Q末時点で48.7%と前期末(50.9%)から2.2ポイント減少しました。

これは主に、支払手形及び買掛金が、前期末比で3,745百万円増加し、流動負債が増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2022年10月期通期)業績の見通し】

今回の自社株買いと2Q決算発表同時に、通期業績予想を上方修正しています。

通期業績予想は、表4のようになっています。

売上高
[億円]
営業利益
[百万円]
経常利益
[百万円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
1 株当たり
当期純利益

[円]
1 株当たり
年間配当金

[円]
前回(2022/3/3)
発表予想
1,0005,3005,6003,900432.41100
今回(6/2)
修正予想
1,0806,4006,7004,600514.27120
増減額801,1001,10070020
増減率[%]8.020.819.617.9
表4:2022年6月2日修正 2022 年10月期通期連結業績予想

今年3月時点の予想から、売上高は8%利益面は2割程度の増額修正をしています。

修正の理由は、

2Q連結累計期間の業績は、半導体製造設備向け需要の拡大自動車・工作機械向け需要の回復銅価格の上昇に伴い建設・電販向けの売上が増加したことにより、

売上高、営業利益、経常利益、親会社に帰属する当期純利益が予想を上回りました。
通期の業績予想も、2Q連結累計期間の業績が予想を上回ったことに加え、

3Q及び4Qは、FA (Factory Automation)ケーブル半導体製造装置、工作機械、自動車設備向けの需要が好調に推移するものと予想され、

建設・電販向け電力ケーブルも同様に新規物件が数多く立上がっていることから売上及び利益の見直しを行ったため、それぞれ前回予想から修正しています。

また、配当金も業績の上方修正に伴い、配当金も年間1株あたり100円から120円に20円増配されています。

こちらは投資家にとってうれしい内容ですね!

株価指標と動向

【2022/6/3(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、フジクラ(5803) 9.8倍、昭和電線ホールディングス(5805) 7.3倍、東京特殊電線(5807) 7.4倍と比較すると、高い水準です。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2017年10月期4519.9
2018年10月期5523.3
2019年10月期70
(内 記念配当
10円含む)
25.3
2020年10月期7028.3
2021年10月期9023.2
表5:泉州電業 年間配当金推移

配当利回りは2.16%で、東証プライムの単純平均2.35%(6/2時点) と比較するとやや低い水準です。

表5のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり45~90円で推移しており、2019年10月期の記念配当10円分を除くと、基本的には連続増配しています。

配当性向は、19%~20数%で安定しています。

この会社は、

利益配分は、安定的な配当を維持することを基本方針とし、当期の業績、内部留保の水準等を考慮し、総合的に判断するとしています。

また、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としています。

【株主優待】

この会社は、株主優待があり、10月末に100株以上保有の株主は、1,000円相当の自社オリジナルクオカードが進呈されます。(1年以上継続保有の場合は2,000円相当)

1年未満100株保有の場合、配当金+株主優待(1,000円相当)で、利回りは2.34%(1年以上継続保有の場合は2.52%)となります。

こちらは個人投資家にとって、うれしい内容ですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、一昨年のコロナショック時の安値からずっと上昇を続け、今年の1月に上場来高値(6,700円)をつけました。

しかしその後は調整していますが、52週移動平均線(青線)の上に株価はあり、この移動平均線は上向きとなっていることから、

まだ、長期的な上昇基調は継続中といえます。  

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、1月に上場来高値をつけた後は、下落基調で推移していましたが、

4月末に年初来安値(4,715円)をつけた後は、上昇に転じてきています

今回の今2Qの決算と通期業績予想の上方修正、そして自社株買い発表の翌営業日(6/3)は、上方修正と自社株買いの2つの株価にポジティブな材料を発表したにもかかわらず陰線をつけて下落し、前日比 130円安(-2.29%)で終了しました。

今後は、75日移動平均線(青線)の上をキープし、上昇を継続していけるのか、これを割り込み、下落に転じるのか要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・自社株買い数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐⭐
流動性⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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