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【公募増資・売出(PO)は買いか?】タツモ(6266)

半導体

こんにちは!

公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証プライムから機械業種のタツモです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」「売出」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

POの概要

今回のPOは、公募による新株式の発行です。発行価格等決定日や受渡期日、発行数量等は表1のようになっています。

ディスカウント率は、「発行価格等決定日」に決まり、その日の終値から数%です。

ちなみに、直近の主なPOのディスカウント率は、JR西日本(9021) 3.01%、日本郵政(6178) 2.01%、クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) 3.09%となってますが、ほぼほぼ2~5%程度です。

ただ、ディスカウント率が大きいPOもあり、直近ではENECHANGE(4169)の8.1%が最大です。

注意点として、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事(今回は、みずほ証券)はじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。

早ければ、6/6(月)の夕刻に、会社側から発行価格等のお知らせが適時開示であります。

このブログ記事も更新しますので、チェックしてくださいね💖

発行価格等決定日2022 年6月6日(月)
受渡期日
(POで買った場合はこの日から売却可能)
2022 年6月 14 日(火)
公募による新株式の発行(一般募集)数量普通株式 1,305,000
発行済み株式総数 13,508,300 株 の約9.66%
株式の売出し
(オーバーアロットメントによる売出し)数量
普通株式 195,000 株(実施決定(6/6)
※上記の「発行価格等決定日」に決定みずほ証券が売出す。
調達資金手取り概算額(上限)18.86 億円
発行価格1,233 円(6/6決定)
ディスカウント率3.07 %(6/6決定)
申込単位数量100 株
主幹事みずほ証券
表1:タツモ PO概要

【本資金調達の目的と背景】

としています。

【調達資金の使途】

に充当する予定としています。

今回の新株式の発行数量は、発行済み株式総数の約9.66%OAを含めた最大の株数で11.1%)で、

直近の新株式の発行のみのPOの売出株数比率(OA含む)は、アルコニックス 19.2%、マーキュリアホールディングス 20.8%、ミダックホールディングス 4.1%でしたので、それと比較すると中間的な数量です。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株の数量)の5日平均は603百株25日平均は979百株流動性は少し低い水準です。

どんな会社?

ハイテクノロジーとヒューマニズムの接点を求め、常に技術革新に取り組んでいる会社です。

精密加工とファインメカトロニクス分野の発展に尽くす独自の技術は、高い評価を受けています。

事業内容は、主に半導体製造装置各種搬送ロボット液晶製造装置精密金型・樹脂成型品などの開発・製造・販売を行っています。

事業セグメントは、「プロセス機器事業」「金型・樹脂成型事業」「表面処理用機器事業」の3つがあり、それぞれの事業内容は以下です。

2021年12月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「プロセス機器事業」の売上が最も多く、約8割を占めています。

直近の経営概況

【2022年12月期1Q(2022年1月~2022年3月)の経営成績】

(2022年5月13日発表)

決算期売上高
[億円]
(前期比[%])
営業利益
[百万円]
(同)
経常利益
[百万円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
(同)
2021年12月期
1Q累計
45.6
(△3.6)
356
(△57.1)
413
(△49.0)
279
(△53.4)
2022年12月期
1Q累計
60.3
(32.3)
645
(81.0)
754
(82.5)
534
(91.0)
2022年12月期
通期会社予想
253
(15.2)
2,555
(22.1)
2,503
(12.8)
1,731
(△1.0)
通期予想に対する
1Qの進捗率[%]
23.825.216.516.1
表2:タツモ 2022年12月期1Q経営成績と2022年12月期通期予想

表2の通り、前年同期比 増収増益で、売上高は3割強増利益面は8~9割の増益で好調です。

2022年12月期通期の業績予想は、前期比 増収増益で、売上高は1割強の増収営業利益は2割強増経常利益は1割強増純利益は微減を予想しており、

それに対する進捗率は、1Q終了時点で、売上高と営業利益は1/4程度でそこそこですが、経常利益と純利益は16%程度と、少し遅れ気味す 。

【2022年12月期1Qの状況、経営成績の要因】

同社グループが属する半導体業界は、サーバー5G(次世代移動通信)リモートワーク向けなど

IT投資用途の電子部品の需要の拡大による設備投資は堅調に推移しました。

このような状況のなか同社グループは、中長期的な成長に向けて、顧客ニーズに対応した装置の開発や生産活動に注力しました。

この結果、表2の前年同期比 増収増益の業績となりました。

【セグメント別の業績】

セグメント売上高
[百万円]

(前年同期比
増減率[%])
営業利益
[百万円]

(同)
プロセス機器4,842
(35.7)
580
(93.6)
金型・樹脂成型404
(9.3)
22
(△30.6)
表面処理用機器789
(26.1)
64
(164)
表3:2022年12月期1Q  セグメント別業績

セグメント別の業績は表3のようになっています。

主力の「プロセス機器事業」は前年同期比 増収増益で、売上高は4割弱増営業利益は9割強増と好調でした。、

「表面処理用機器事業」は増収増益、「金型・樹脂成型事業」は増収減益の結果でした。

セグメント毎の状況は以下です。

プロセス機器事業

半導体装置部門

コロナ禍でリモートワーク向けなどのIT投資関連の需要が伸びたことによる設備投資が堅調であったため、売上高は1,150百万円(前年同期比200.3%増

洗浄装置部門

装置の検収が遅れた影響があり、売上高は287百万円(前年同期比69.4%減

コーター部門:TFTカラー液晶ディスプレイ向けカラーフィルター製造装置及びその周辺機器の製造、販売、メンテナンス)

中小型パネル向け装置が堅調であり、売上高は1,591百万円(前年同期比84.2%増

金型・樹脂成型事業

国内の電子部品業界の業績は回復したが中国の景気減速により、前期比で微増の増収3割の減益

表面処理用機器事業

車載用プリント基板メーカーの設備投資が比較的堅調だったため、

前期比で3割弱の増収2倍強の増益

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

1Q末時点で42.5%と前期末(45.5%)から3.0ポイント減少しました。

これは主に、長期借入金が、前期末比で2,186百万円増加し、固定負債が増加したことによるものです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2022年12月期通期)業績の見通し】

新型コロナウイルスの感染拡大の長期化の影響により、世界経済が予想以上に減速していると同社は考えています。

連結業績予想は、現時点では、ほぼ当初の計画通りに推移しており、また、新型コロナウイルス感染拡大による影響が限定的であることから、

2022年2月12日に公表された「2021年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)」から変更なしです。

株価指標と動向

【2022/5/27(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、テクノスマート(6246) 13.2倍、ヘリオステクノ(6927) 10.4倍、マルマエ(6264) 15.2倍と比較すると、低い水準です。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2017年12月期5.1
2018年12月期11
(内 記念配当
2円)
8.9
2019年12月期16.6
2020年12月期1612.6
2021年12月期1612.1
表4:タツモ 年間配当金推移

配当利回りは1.51%で、東証プライムの単純平均2.39%(5/27時点) と比較すると低い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、年間1株あたり7~16円で推移しており、2018年12月期の記念配当2円分を除くと、基本的には増配傾向です。

配当性向は、数%~10%台と低位で安定しています。

この会社は、

財務体質と経営基盤の強化を図るとともに、株主に対する利益還元を重要課題の一つとして位置づけ、

業績、今後の事業計画、配当性向などを総合的に勘案し、

安定的な配当を継続実施することを基本として、配当性向20%の実現を目指しています

また、内部留保資金は研究開発や財務体質の強化に充当する考えです。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、昨年4月の高値(2,104円)から下落トレンドで推移しており、今年の1月に年初来安値(1,214円)をつけました。

その後は、この安値を更新していないですが、高値切り上げも起こっていない状況です。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、3月の初めに年初来高値(1,732円)をつけた後は、下落トレンドで推移しており、

5/12に安値(1,230円)をつけた後は、少し戻してきています。

今後は、この安値を下抜けて下落トレンドを継続するのか、3月につけた年初来高値(1,732円)に戻っていくのか、要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・発行株数】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル
(⭐(最低)~
⭐⭐⭐⭐⭐(最高))
業績⭐⭐⭐⭐
株主還元
(配当、株主優待等)
⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐
流動性⭐⭐
株式の発行数量⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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