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【自社株買いは買いか?】ファナック(6954)

こんにちは!

直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証1部から電気機器業種のファナックです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

自社株買いのメリットとデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。(配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    • 自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 自社の株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    • 自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買い発表日2022年3月24日(木)
自己株式取得を行う理由経営環境の変化に対応し資本政策の柔軟性・機動性を確保するため
取得期間2022年4月1日~ 2023年3月31日
取得株式の総数普通株式 250 万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:1.30%
取得金額の総額500 億円(上限)
取得方法東京証券取引所における市場買付
表1:太陽ホールディングス 自社株買い概要

今回の自己株式の取得数量は、発行済み株式総数(自己株式を除く)の1.30%自社株買いの数量としてはほどほどの数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は7,187百株、25日平均は9,033百株で、流動性は高い水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

1955年にNC(Numerical Control:数値制御)の開発をスタートさせて以来、一貫して工場の自動化を追求している会社です。

具体的には、ファクトリーオートメーション(FA)の総合的なサプライヤとして、CNC(Computerized Numerical Control :コンピュータ数値制御)システム(CNCおよびサーボモータ)、レーザ、ロボット及びロボットマシン(ロボドリル(小型切削加工機)、ロボショット(電動射出成形機)、ロボカット(ワイヤカット放電加工機)、ロボナノ(超精密加工機))など、

CNCシステムの技術をベースとし、自動化による生産システムに使用されるものの開発、製造、販売、保守サービスをしています。

各部門の主要製品は、以下となっています。

2021年3月期通期の製品・サービス毎の売上高構成比は、

となっており、「ロボット」の売上が最も多くなっています

直近の経営概況

2022年3月期3Q(2021年4月~2021年12月)の経営成績】(2022年1月26日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年同期比[%])
営業利益
[億円]
(同)
経常利益
[億円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[億円]
(同)
2021年3月期3Q累計3,752
(△2.9)
653
(△4.9)
754
(△5.4)
553
(△2.1)
2022年3月期3Q累計5,403
(44.0)
1,399
(114)
1,615
(114)
1,188
(115)
2022年3月期通期会社予想
(2022年1月26修正)
7,262
(31.7)
1,865
(65.8)
2,147
(66.8)
1,593
(69.4)
通期予想に対する3Qの進捗率[%]74.475.075.274.6
表2:ファナック 2022年3月期3Q経営成績

2022年3月期3Q累計の業績は、前年同期比 増収増益で、売上高は4割増、利益面は2倍以上の増益となっており、好調です。

2022年3月期通期の業績の予想は、今3Qの決算発表と同時に上方修正し、前期比 増収増益で、売上高は3割増、利益面は7割弱の増益を見込んでいて、

通期予想に対する進捗率は、3Q終了時点で、売上高、利益面ともに3/4ほどで順調です。

【セグメント別の業績】

セグメント別の売上高は、表3の結果になりました。

セグメント売上高[億円]
(前年同期比
増減率[%])
FA1,639
(56.0)
ロボット1,981
(38.1)
ロボマシン1,092
(54.0)
サービス691
(23.7)
表3:2022年3月期3Q  セグメント別売上高

どの部門も好調で、特に「FA」と「ロボマシン」は5割超の増収となっています。

セグメント別の状況は以下です。

FA

CNCシステムの主要顧客である工作機械業界の需要は、堅調であった中国に加えて欧米でも増加する等、各主要市場で堅調に推移し、同社のCNCシステムの売上も増加

レーザについては、海外メーカとの厳しい競
争が継続

ロボット

中国 IT 関連、EV、重機、建機向けを中心に売上が堅調に推移

米国でも一般産業向けおよび EV 関連の需要を取り込んだ自動車産業向けが堅調であった他、欧州でも一般産業向けが好調に推移し、売上が増加

また、国内でも、低調であった前年同期に比べ売上が増加

ロボマシン

ロボドリル(小型切削加工機)は、中国でパソコン、タブレット市場向けの旺盛な需要を受け、売上が増加

ロボショット(電動射出成形機)は、IT 関連、医療市場向けの需要が好調に推移し、売上が増加

ロボカット(ワイヤ放電加工機)も、IT 関連、自動車部品市場向けの需要が好調に推移し、売上が増加

サービス

売上例年並みに回復

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2022年3月期3Q末時点で86.5%と前期末(87.7%)から1.2ポイント減少しました。

これは主に、支払手形及び買掛金が前期末比で166億円増加したことにより、流動負債増加したためです。

自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2022年3月期通期)業績の見通し】

2022年3月期3Q決算発表と同時に、通期業績見通しを上方修正しています。

通期業績予想は、表4のようになっています。

売上高
[億円]
営業利益
[億円]
経常利益
[億円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[億円]
1 株当たり
当期純利益

[円]
前回(2021/10/27)
発表予想
7,0891,7752,0341,508786.16
今回(1/26)
修正予想
7,2621,8652,1471,593830.48
増減額1739011385
増減率[%]2.45.15.65.6
表4:2022年1月26日修正 2022 年3月期通期連結業績予想

昨年10月時点の予想から、売上高は2%、利益面は5%の微増の予想に修正しています。

修正の理由は、

半導体等の部品の不足により先行き不透明な状況が続くものの、FA、ロボット、ロボマシンの各部門において、様々な分野で旺盛な需要が見込まれるためとしています。

また、為替レートは、2022年1月から2022年3月までの期間における平均105円/ドル、125円/ユーロを想定していますが、

足元(3/25時点)の為替レートは、121円/ドル、134円/ユーロと円安で推移していますので、

この予想よりも上振れする可能性は十分あります

株価指標と動向

【2022/3/25(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、三菱電機(6503) 14.4倍、SMC(6273) 26.3倍、ツガミ(6101) 6.7倍と比較すると、高めの水準です。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2017年3月期395.1860.0
2018年3月期563.260.0
2019年3月期1003.11
(内 特別配当
525.9円)
126
2020年3月期300
(内 特別配当
70.86円)
78.6
2021年3月期294.0760.0
表4:ファナック 年間配当金推移

年利回りは2.3%で、東証1部の単純平均2.14%(3/24時点) と比較するとほぼ同水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり300~1,000円程度で幅がありますが、配当性向は、特別配当が加算された年を除くと60%で一定です。

この会社の配当を含む株主還元の基本方針は、

  1. 配当
    連結配当性向 60%を基本方針として実施
  2. 自己株式取得
    成長投資とのバランスを考慮し、株価水準に応じて、自己株式取得を機動的に行う
  3. 自己株式消却
    自己株式の保有は発行株式総数の5%を上限とし、それを超過する部分は原則として毎期消却する。

としています。連結配当性向 60%と高めで、具体的な内容になっており好感が持てますね。

なお、同社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、一昨年のコロナショック時の安値から、一気に上昇し、昨年2月にその安値の2倍以上の高値(29,700円)をつけました。

しかしその後は、高値切り下げ安値切り下げの下落トレンドで推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、今年の年初に高値(25,480円)をつけた後は、右肩下がりの下落トレンドで推移しています。

しかし、3/7に安値(18,740円)をつけた後は、上昇に転じてきており

今回の自社株買い発表の翌営業日(3/25)は、これを好感されて、前日比 195円高(+0.9%)で終了しています。

今後は、75日移動平均線(青線)を上抜ければ、更なる上昇が期待できそうです。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・自社株買い数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐⭐
配当を含む株主還元⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐⭐(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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