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【自社株買いは買いか?】太陽ホールディングス(4626)

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こんにちは!

直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?足元の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証1部から化学業種の太陽ホールディングスです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

自社株買いのメリットとデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。(配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    • 自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 自社の株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    • 自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買い発表日2022年3月18日(金)
自己株式取得を行う理由・株主への利益還元
経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行
取得期間2022年3月22日~ 2023年3月16日
取得株式の総数普通株式 100 万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:1.78%
取得金額の総額15億円(上限)
取得方法投資一任方式による市場買付
表1:太陽ホールディングス 自社株買い概要

今回の自己株式の取得数量は、発行済み株式総数(自己株式を除く)の1.78%自社株買いの数量としてはほどほどの数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

また、この会社は、2021年3月23日~2022年2月10日にも、46.4万株、15億円の今回と同規模の自社株買いを実施しています。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,049百株、25日平均は931百株で、流動性は平均的な水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

スマートフォンやパソコンなどのIT機器やデジタル家電、車載用電子機器など、あらゆるエレクトロニクス製品に利用されるプリント配線板に欠かせないソルダーレジストプリント配線板(PWB)の表面を覆い、回路パターンを保護する絶縁膜となるインキ)で、世界シェアトップクラスを誇る化学メーカーです。

主な事業内容は、PWB用部材をはじめとする電子部品用化学品部材の開発・製造販売及び仕入販売に関する電子機器用部材事業」、

医薬品・医薬部外品の開発・製造販売・製造受託に関する医療・医療品事業」を行っています。

2021年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、「電子機器用部材事業」の売上が6割強を占めています。

直近の経営概況

2022年3月期3Q(2021年4月~2021年12月)の経営成績】(2022年2月8日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年同期比[%])
営業利益
[億円]
(同)
経常利益
[億円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[億円]
(同)
2021年3月期3Q累計605
(15.6)
109
(59.7)
108
(61.4)
77.1
(55.2)
2022年3月期3Q累計736
(21.8)
144
(31.5)
146
(35.3)
104
(34.4)
2022年3月期通期会社予想 ※
(2022年2月8修正)
939
(ー)
170
(ー)
172
(ー)
121
(ー)
通期予想に対する3Qの進捗率[%]78.484.585.185.6
表2:太陽ホールディングス 2022年3月期3Q経営成績
※2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用するため、上記の連結
業績予想は当該会計基準等を適用した後の金額となっており、対前期増減率は記載なし

2022年3月期3Q累計の業績は、前年同期比 増収増益で、売上高は2割増、利益面は3割強増となっており、好調です。

2022年3月期通期の業績の予想は、会計基準が異なるので単純比較はできませんが、

今3Qの決算発表と同時に上方修正し、前期比 増収増益で、売上高は1割強増、利益面は2割強の増益を見込んでいて、

通期予想に対する進捗率は、3Q終了時点で、売上高は3/4ほどでまあまあですが、利益面は8割を超過しており、さらに通期計画を上振れしそうな勢いです。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

セグメント売上高[億円]
(前年同期比
増減率[%])
営業利益
[億円]

(同)
電子機器用部材530
(36)
128
(50)
医療・医薬品181
(△4)
25.2
(△20)
その他24.8
(0.3)
△1
(前期17百万円
の利益)
表3:2022年3月期3Q  セグメント別業績

主力の「電子機器用部材事業」は増収増益で好調ですが、

医療・医薬品事業」は減収減益の結果でした。

セグメント別の状況は以下です。

電子機器用部材事業

売上高は、前年同期比で36%増加営業利益は、前年同期比で50%増加

(主要因)

医療・医薬品事業

売上高は、前年同期比で4%減少営業利益は、前年同期比で20%減少

(主要因)

アストラゼネカ社より、4製品※すべての製造販売承認の承継及び販売移管を完了しています。

※プロトンポンプ・インヒビター(2製品):胃酸の分泌を抑制する薬、高血圧・狭心症・不整脈治療剤(1製品)、徐放性高血圧治療剤(1製品)の計4製品

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2022年3月期3Q末時点で45.0%と前期末(42.5%)から2.5ポイント増加しました。

これは主に、利益剰余金が前期末比で58.1億円増加したことにより、株主資本増加したためです。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

【今期(2022年3月期通期)業績の見通し】

2022年3月期3Q決算発表と同時に、通期業績見通しを上方修正しています。

通期業績予想は、表4のようになっています。

売上高
[百万円]
営業利益
[百万円]
経常利益
[百万円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[百万円]
1 株当たり
当期純利益

[円]
前回(2021/11/5)
発表予想
922159160112198.35
今回(2/8)
修正予想
939170172121214.08
増減額171112
増減率[%]1.86.97.58.0
表4:2022年2月8日修正 2022 年3月期通期連結業績予想

当初予想から、売上高、利益面ともに微増の予想に修正しています。

修正の理由は、

電子機器用部材事業は、2022 年 3 月期 3Qの業績においては、半導体パッケージ基板用部材民生用関連部材ディスプレイ関連部材が好調に推移しました。

特に、半導体パッケージ基板用部材では、モバイル端末用のアプリケーションプロセッサーやメモリー向けのドライフィルム製品等の需要が想定を上回りました

また、為替が円安を基調に推移したことにより、収益性が向上しました。

医療・医薬品事業については、2022年3月期3Qの業績において、売上高他社後発医薬品の供給停止となった影響で一部製品が増加したものの、型コロナウイルス感染症の影響で、一部製品の売上高が減少し、低調に推移しました。

一方、営業利益プロダクトミックスの変化販売費及び一般管理費の下振れ等により、想定を上回りました

その結果、昨年11月に開示した通期連結業績予想を上回る見込みとなりました。
2021年3月期4Qの業績予想は据え置いています。

株価指標と動向

【2022/3/18(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、日本高純度化学(4973) 14.4倍、メック(4971) 20.7倍、タムラ製作所(6768) 55.9倍と比較すると、低めの水準です。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2017年3月期60.0545.1
2018年3月期80.195.0
2019年3月期65.185.3
2020年3月期65.198.6
2021年3月期80.147.8
表4:太陽ホールディングス 年間配当金推移

年利回りは2.1%で、東証1部の単純平均2.20%(3/18時点) と比較するとほぼ同水準です。

表4のように、直近5年間の配当金は、1株当たり60~80円で推移しています。

配当性向は、45~100%でかなり高めで推移しています。

この会社は、

現金による株主への利益還元を重要政策として位置付けており、継続的かつ安定的に高水準の利益還元を実施しています。

株主資本配当率目標指標とし、「連結決算を基準に株主資本配当率を中長期的に5%以上とすること」を目処としています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

週足ベースの株価は、一昨年のコロナショック時の安値から、安値切り上げ高値切り上げの上昇トレンドで推移し、今年の年初に高値(3,600円)をつけました。

しかしその後は、日経平均の下落とともに調整しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、年初に高値をつけた後は下落トレンドで推移し、3/8に安値(2,790円)をつけました。

しかしその後は、値を戻し始め25日移動平均線(赤線を上抜いてきました

今後は、75日移動平均線(青線)を上抜けさらに上昇していくのか、75日移動平均線の手前で失速し、再び下落していくのか要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・自社株買い数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐⭐
配当を含む株主還元⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐⭐(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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