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【自社株買いは買いか?】ケーズホールディングス(8282)

テレビ

こんにちは!

直近で自己株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証1部から小売業種のケーズホールディングスです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

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上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

自社株買いのメリットとデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。(配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    • 自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が小さくなりROEが上がります。
  5. 自社の株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    • 自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自社株買いの概要

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自社株買いを行う理由株主価値を高めるとともに資本効率の向上及び経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行するため
自社株買い発表日2022年2月1日(火)
取得期間2022年2月2日~ 2022年5月31日
取得株式の総数普通株式 1,000万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:5.04%
取得金額の総額100億円(上限)
取得方法ー(言及無し)
表1:ケーズホールディングス 自社株買い概要

今回の自己株式の取得数量は、発行済み株式総数の5.04%と自社株買いの数量としてはかなり多い数量(※1)です。

※1 一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は12,501百株、25日平均は7,565百株で、流動性は高い水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

北関東が地盤の、家庭電化製品やその関連商品販売及び付帯工事・修理を行っている、いわゆる家電量販店「ケーズデンキ」を運営している会社です。

同社グループが運営する「ケーズデンキ」は、大型の家電専門店として、家電品を専門に取り扱っており、

家電品に絞ることで、ローコスト経営と従業員の専門性の高さを保持しています。

また、家電品を試用・体験できる売り場づくりなど、家電専門店ならではの特徴ある店舗づくりに取り組んでいます。

同社は、IoT、AI家電など最先端家電を実際に家庭で使用するイメージ空間に集合展示した「つながる家電」体験コーナーの開設に注力しており、今後も順次設置店舗を拡大していく予定です。

2021年12月末の店舗数は528店(直営店524店、FC店4店)です。

2021年3月期通期の商品別売上高構成比は、

となっており、「家庭電化製品」が一番多くなっており、次に「情報機器」が多く、両方合わせて6割を占めています。

直近の経営概況

2022年3月期3Q(2021年4月~2021年12月)の経営成績】(2022年2月1日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年同期比[%])
営業利益
[億円]
(同)
経常利益
[億円]
(同)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[億円]
(同)
2021年3月期3Q累計6,065
(10.8)
455
(74.3)
493
(67.5)
334
(68.1)
2022年3月期3Q累計5,616
(△7.4)
313
(△31.3)
349
(△29.2)
239
(△28.6)
2022年3月期通期会社予想
(2022年2月1日修正)
7,400
(△6.6)
400
(△22.7)
450
(△20.7)
290
(△25.1)
通期予想に対する3Qの進捗率[%]75.978.277.582.3
表2:ケーズホールディングス 2022年3月期3Q経営成績

2022年3月期3Q累計の業績は、前年同期比 減収減益で、売上高は1割弱減、利益面は3割減となっています。

2022年3月期通期の業績は、今3Q決算発表と同時に下方修正しており、前期比で売上高は1割弱減、利益面は2割程度の減益を予想しており、

通期予想に対する進捗率は、3Q終了時点で3/4ほどに達していて順調です。

【2022年3月期3Qの状況、経営成績の要因】

同社グループは、正しいことを確実に実行する「がんばらない(=無理をしない)」経営を標榜し、お客様に伝わる「本当の親切」を実行すべく、「現金値引」、「長期無料保証」、「あんしんパスポート」等お客様の立場に立ったサービスを提供し、家電専門店としてお客様の利便性を重視した地域密着の店舗展開、営業活動を行ってきました。

その様な中、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策の徹底を継続し、折込チラシの自粛や一部店舗での営業時間短縮を継続しました。また、1Q期間は、緊急事態宣言下での休業要請を受け、最長で4月25日から5月13日までの期間、大阪府、兵庫県、京都府に立地する全39店舗を臨時休業しました。

業績は、家電製品の買い替え需要は底堅く継続しているものの、7月及び8月の天候不順によりエアコンや冷蔵庫等が振るわなかったこと、11月及び12月は特に東日本において気温が高めに推移したことでエアコンや暖房商品が低調であったこと等により、

2020年5月の特別定額給付金の支給や6月及び8月の猛暑で非常に好調であった前年同期を下回る結果となりました。

出退店状況は、直営店10店舗を開設し、直営店1店舗を閉鎖して店舗網の強化・経営の効率化を図ってきました。これらにより、2021年12月末の店舗数は528店(直営店524店、FC店4店)となりました。

【財政面の状況】

自己資本比率>(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100

2022年3月期3Q末時点で65.7%と前期末(64.2%)から1.5ポイント増加しました。

自己資本比率の数値としては良好なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

キャッシュ・フロー

2022年3月期3Qのキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況

フリー・キャッシュ・フロー:プラスの場合、会社が使える資金があることを意味し、マイナスの場合、会社が自由に使うことができる資金が少ないことを意味する。

前期(2021年3月期)3QのフリーCF(328億円の収入)から312億円悪化しています。

これは主に、税金等調整前四半期純利益が前期比で141億円減少仕入債務が130億円減少したことにより、営業活動によるCFの収入が減少し、

有形固定資産の取得による支出が64億円減少等により投資活動によるCFの支出は減少しましたが、これが営業活動によるCFの収入の減少を補えなかったためです。

【今期(2022年3月期通期)の見通し】

2022年3月期3Q決算発表と同時に、通期業績予想を下方修正しています。

通期業績予想は、表3のようになっています。

売上高
[億円]
営業利益
[億円]
経常利益
[億円]
親会社株主に
帰属する
当期純利益
[億円]
1 株当たり
当期純利益

[円]
前回(2021/5/6)
発表予想
7,720445490320155.42
今回(1/31)
修正予想
7,400400450290142.33
増減額△320△45△40△30
増減率[%]△4.1△10.1△8.2△9.4
表3:2022年2月1日修正 2022 年3月期通期連結業績予想

当初予想から、売上高は4%減額利益面は1割程度減額修正しています。

修正の理由は、

生活家電の買い替え需要は底堅く継続しているものの、7月及び8月の天候不順によりエアコンや冷蔵庫が振るわなかったこと11 月及び 12 月は特に東日本において気温が高めに推移したことでエアコンや暖房商品が低調であったこと等により、当初計画を下回る見込みとなりました。

また、新たな変異株の出現が確認されるなど先行き不透明な状況が続いていること及び足元の状況を勘案しています。

株価指標と動向

【2022/2/2(水)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、エディオン(2730) 8.7倍、ビッグカメラ(3048) 17.9倍、ヤマダホールディングス(9831) 6.1倍と比較すると、低い水準です。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2017年3月期27.527.4
2018年3月期31.5
(記念配当
1.5円含む)
28.5
2019年3月期3029.1
2020年3月期3031.2
2021年3月期4021.9
表4:ケーズホールディングス 年間配当金推移

年利回りは3.4%で、東証1部の単純平均2.10%(2/2時点) と比較すると高い水準です。

表4のように、直近5年間の配当金2018年3月期の記念配当を除くと同額か増配をしています。

配当性向は、30%前後で安定しています。

この会社は、

株主に対する利益還元を経営の重要政策の一つとして位置付けており、店舗の新設や経営革新のための設備投資を行い会社の成長に努め競争力を強化するとともに、

安定配当を基本とし、業績に裏付けられた成果配分を行うことを利益配分の基本方針としており、連結配当性向30%を目指しその実現に努めています。

【株主優待】

この会社は株主優待があり、3月末と9月末の年2回、100株以上保有の株主に、ケーズデンキの店舗で使用可能な優待券(1,000円券)1枚がいただけます。

※500株以上:3枚、1,000株以上:5枚、3,000株以上:10枚、6,000株以上:20枚、10,000株以上:30枚

そして、1年以上継続(株主名簿に連続3回以上記載)の場合は、100株以上1,000株未満で1枚、1,000株以上2枚追加されます。

となります。こちらは個人投資家にとってうれしいですね!

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

株価は、一昨年のコロナショック時の安値(920円)から一気に上昇し、同年8月に高値(1,597円)をつけました。

しかしその後はこの高値を超えられず、ダブルトップの形で下落トレンドで推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、昨年11月中旬に高値(1,222円)をつけた後は、下落トレンドで推移していましたが、

今年に入り、下値は1,080円程度で底堅く、もみ合っていました。

そして、今3Qの決算発表と通期業績の下方修正、自社株買いを発表した翌営業日(2/2)は、自社株買いのほうの好感が上回り、窓を開けて出来高を伴い買われ、前日比 62円高(+5.5%)で終了しました。

今後は、直近の高値(1,222円)を上抜けてくれば、一段高が期待できそうです。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・自社株買い数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐
配当を含む株主還元⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐⭐(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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