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【自社株買いは買いか?】モバイルファクトリー(3912)

モバイル

こんにちは!

直近で自社株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証1部から情報・通信業種のモバイルファクトリーです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

自社株買いのメリットとデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。(配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    • 自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が少なくなりROEが上がります。
  5. 自社の株価は「割安」というメッセージを送ることができる。
    • 自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自己株式取得の概要

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自己株式の取得を行う理由資本効率の向上、及び経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行とともに、株主還元策として1株当たりの価値向上のため
自社株買い発表日2021年10月22日(金)
取得期間2021年10月25日~ 2021年12月23日
取得株式の総数普通株式 10万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:1.2%
取得金額の総額1億円(上限)
取得方法東京証券取引所における市場買付け
表1:モバイルファクトリー 自社株買い概要

今回の株式の取得数量は、発行済み株数(自己株式除く)の1.2%と自社株買いの数量としてほどほどの水準※です。

※一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

この会社は、今年2月にも24.1万株、2.5億円の自社株買いを実施しており、今回の規模は前回の半分以下の予定です。

また、この会社は、来年4月からの東証の市場再編における最上位の「プライム市場」入りを目指しており、今年7月に通知された一次判定の結果、「流通株式時価総額」のみ基準を満たしていない旨の通知を受けました。

これに対し同社は、「上場維持基準への適合に向けた計画書」を作成し開示する予定となっています。今回の自社株買いにより株価を上げ、基準に足りていない「流通株式時価総額」を上げるという狙いもあるものと思われます。

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は1,625百株、25日平均は1,164百株ですので、流動性は平均的な水準です(1,000百株を平均水準としています)。

どんな会社?

2001年に創業し、着信メロディのASP(アプリケーションサービスプロバイダ)サービスで始動し、

現在では、モバイルサービス事業を単一事業とし、位置ゲーム「ステーションメモリーズ!」(略称:駅メモ!)を中心としたソーシャルアプリサービスと着信メロディを中心としたコンテンツサービスを提供している会社です。

2018年に入り、新事業のブロックチェーン※関連サービスの開発を開始しています。

※ブロックチェーン:暗号技術を使ってリンクされたブロックと呼ばれるレコードの増大するリスト。暗号通貨ビットコインの公開取引台帳としての役割を果たすために発明したものである。

ウィキペディアより

同社のサービスは、

があります。

2020年12月期の製品・サービス毎の売上高構成比は、

となっており、「ソーシャルアプリサービス」の売上が8割以上を占めています。

直近の経営概況

2021年12月期3Q(2021年1月~2021年9月)の経営成績】(2021年10月22日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年同期比[%])
営業利益
[億円]
(同)
経常利益
[億円]
(同)
親会社の所有者に
帰属する純利益
[億円]
(同)
2021年12月期3Q累計2,093
(△12.7)
628
(△23.1)
630
(△22.8)
435
(△15.0)
2021年12月期3Q累計2,034
(△2.8)
561
(△10.7)
564
(△10.6)
387
(△11.0)
2021年12月期通期会社予想(未定)(未定)(未定)(未定)
通期予想に対する3Qの進捗率
表2:モバイルファクトリー 2021年12月期3Q経営成績

2021年12月期3Qの業績は、前年同期比 減収減益で、売上高は微減ですが、利益面は1割程度減少しており、少し寂しい内容となっています。

前年同期(2020年12月期3Q)も減収減益だっただけに、減速感が鮮明になっています。

通期予想は、新規事業を含めた同社グループを取り巻く事業環境が、新型コロナウイルス感染症をはじめとする短期的な変化が激しいことから、適正かつ合理的な数値の算出が困難であるため、2021年12月期の連結業績予想は開示されていません。

【2021年12月期3Qの状況、経営成績の要因】

同社グループに関連するモバイルコンテンツ市場及びソーシャルゲーム等市場は、次世代モバイル通信「5G」による高速・大容量のサービスが浸透することで、さらなる市場の活性化が予想されているものの、楽観視はできないとの見方もあります。

新型コロナウイルス感染症の収束時期が依然として不透明な状況であり、2021年10月に緊急事態宣言の解除が行われるものの、依然として感染拡大の防止に努めることを求められていることから、同社グループの主力サービスである位置情報連動型ゲームの市場成長に大きく影響する可能性があると考えています。

また、ブロックチェーンサービスの市場は、国内外において順調に成長することが見込まれており、フェーズ(段階)別では実証実験が多いものの、順次商用化に向けた効果検証フェーズや本格的な商用化フェーズへと進む案件が増えていくと考えています。

海外では2021年に入ってから、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)マーケットが急速に拡大しており、国内でもNFTが注目され、市場参入する企業が増えていることから今後も大きな成長が見込まれるものと考えています。

このような状況の下、同社グループは昨年に導入した働き方3.0の「モバワーク」により、あらゆる情勢に応じた柔軟な運営を継続的に行い、業務効率化による生産性向上等に取り組んでいるだけでなく、本社オフィス移転に伴ってコスト削減に努めています。

なお、当3Q期間より、報告セグメントの区分を変更しており、事業セグメントをモバイルゲーム事業コンテンツ事業ブロックチェーン事業として開示しております。そのため、当3Q期間におけるセグメント別の業績は、前年同四半期との比較分析を行っていません。

【セグメント別の業績】

セグメント別の業績は、表3の結果になりました。

セグメント売上高[百万円]
(前年同期比[%])
営業利益
[百万円](同)
モバイルゲーム1,712
(ー)
467
(ー)
コンテンツ322
(ー)
183
(ー)
ブロックチェーン7千円
(ー)
△88
(ー)
表2:2021年12月期3Q  セグメント別業績

「ブロックチェーン事業」に関しては、売上はほとんどなく、赤字の状態です。

モバイルゲーム事業

位置情報連動型ゲームである「駅メモ!(ステーションメモリーズ!)」及び「アワメモ!(駅メモ! Our Rails)」において、

コロナ禍の影響が続くなか、感染症の動向や社会情勢を注視しつつ、他社IPとのコラボイベントを実施等、ゲームを継続して遊んでもらえるような施策を行いました。

また、「駅メモ!」では、ライセンスの月額サブスクリプションを2021年6月に実装しました。

「アワメモ!」の新機能であるステーションNFT(旧称 駅トークン)は、2021年9月までに4回のオークションを実施しました。

その他の位置情報連動型ゲームの「駅奪取」においても、コラボイベントの実施等、ゲームを継続して遊んでもらえるような施策を行っています。

コンテンツ事業

プラットフォームであるキャリア各社の方針変更により、2021年3月にフィーチャーフォン向けサービスが終了しました。

また、自社で運営している各着信メロディサービスの課金会員数が緩やかに減少しています。

ブロックチェーン事業

目標に掲げている「Uniqys SaaS」利用者拡大への取り組みとして、デジタルデータをブロックチェーン上で個人の資産として保有可能とする、NFT(非代替性トークン:ブロックチェーンのデジタル台帳上のデータの単位)生成・販売のプラットフォームである、「ユニマ(Uniqys マーケットプレイス)」を2021年7月にリリースしました。

取り扱う商材とするアートや書籍といったNFTの販売を行い、SaaSの機能拡充に向けても取り組みました。

また、継続してコンプライアンス充足のための関係各所との協議を行うとともに、ゲーム以外の多種多様なNFTの独占販売に向けて取り組んでいます。

【財政面の状況】

自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100)は、2021年12月期3Q末時点で91.3%と前期末(87.3%)から4.0ポイント増加しました。

自己資本比率の数値としては十分なレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

株価指標

【10/26(火)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、コロプラ(3668) 34.5倍、カヤック(3904) 14.4倍、エイチーム(3662) 30.3倍と比較すると、低い水準です。

直近の配当金は、表4のようになっています。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2016年12月期13.531.0
2017年12月期1731.4
2018年12月期
2019年12月期
2020年12月期
表3:モバイルファクトリー 年間配当金推移

直近の過去3年間は無配が続いています。

配当性向は、配当金が出ていた2016年と2017年は30%程度と安定しています。

この会社は、

株主に対する利益還元を重要な経営課題と認識するとともに、持続的な成長に必要な経営体質の強化及び設備投資を行うことも経営上重要ととらえています。

そのため、持続的な成長のための内部留保と株主に対する利益還元をバランスよく実施していく方針です。

具体的には、業績・財務状態及び株価水準を総合的に勘案しながら、株主に対する充実した利益還元を実施するために、総還元性向30%を目標として配当及び自己株式の取得を行う方針としています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

株価は、昨年のコロナショック時の安値(896円)を付けた後、しばらく、900~1,350円程度のレンジで推移していましたが、

今年3月から急に値を上げていき、4/16に高値(1,823円)をつけました。

しかしながらその後は、現時点まで値を下げ続け1,000円前後で推移しています。

<日足チャート(直近3か月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、1,000~1,150円程度のレンジでもみ合いが続いています。

今回の自社株買い発表と2021年12月期3Qの業績発表が、10/22のザラバ中(取引時間中)にあり、その直後から大きく売られ値を下げました。

しかしながら、翌日以降は、自社株買いの好感のほうが優位になったのか、980円程度で下げ止まっています。

今後、上値抵抗だった75日移動平均線(青線)を上抜けて、上昇に転じてくるのか要注目です。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・自社株買い数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐
配当を含む株主還元⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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