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【自社株買いは買いか?】グリー(3632)

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こんにちは!

直近で自社株式の取得を発表した銘柄に関して、この発表のタイミングで株を買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

今回は、東証1部から情報・通信業種のグリーです。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことをいう。

日本証券業協会HP 金融・証券用語集

自社の株を買った後は、

  1. 買い戻した株式を消却する。(無効とする。)
  2. 金庫株としてそのままにしておき、いずれ資金調達などの目的で売却する。

の2通りあります。

自社株買いのメリットとデメリット

<メリット>

  1. 発行済み株式数が減るため、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)が増えるので、企業価値が上がる=株価が上がる可能性がある。(配当とともに株主還元の一つ)
  2. 配当金の支払いが少なくて済む。(企業側のメリット)
  3. 敵対的買収の防衛策(株価が上がって敵対企業が株を買いにくくなることと、市場に出回る株数の割合が少なくなるため)
  4. ROE(株主資本利益率:ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本×100(%))が上がる。
    • 自社株買いを行った場合、自己資金が減りますので、分母の「自己資本」が少なくなりROEが上がります。
  5. 自社の株価は割安だとメッセージを送ることができる。
    • 自社の株が安い時に買った方が、購入資金が少なくて済みます。(企業側のメリット)

<デメリット>

  1. 自己資金が減り、設備投資などの自社の成長に回せる資金が少なくなる。
  2. 自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)が下がる。

などがあります。

それでは、見ていきましょう!

自己株式取得の概要

会社から発表された自己株式取得の概要は、表1のようになっています。

株数と金額の上限が設定されていますが、株価が上がれば、取得に必要な金額も大きくなりますので、予定の取得株数よりも少なくなることが多いです。

自己株式の取得を行う理由株主還元の一環として、また、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行を可能にするため
自社株買い発表日2021年9月30日(木)
取得期間2021年10月1日~ 2022年9月22日
取得株式の総数普通株式 3,500万株(上限)
発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合:16.8%
取得金額の総額350億円(上限)
取得方法(発表無し)
表1:グリー 自社株買い概要

取得数量は、発行済み株数(自己株式除く)の16.8%と自社株買いの数量としては非常に多い数量※です。

※一概に言えませんが、目安として、5%以上:かなり多い、3%以上5%未満:多い、1%以上3%未満:ほどほど、1%未満:少ないとしています。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は4,882百株、25日平均は5,570百株(1,000百株を平均水準としています)ですので、流動性はやや高い水準です。

どんな会社?

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)GREEを創業事業とし、世界初のモバイルソーシャルゲームを開発するなど、日本のモバイルインターネットサービスを牽引している会社です。

現在は、主にインターネットメディア事業を展開しており、国内外でのスマートフォン向けアプリゲームの開発及び運営、「REALITY」(バーチャルライブ配信アプリ)の運営や複数のメディアの運営等を行っています。

その他にも、広告事業や投資・インキュベーション事業を展開しています。

事業セグメントは、「インターネットメディア事業」の単一セグメントです。

直近の経営状況

2021年6月期通期(2020年7月~2021年6月)の経営成績】(2021年8月6日発表)

決算期売上高
[億円]
(前年同期比[%])
営業利益
[億円]
(同)
経常利益
[億円]
(同)
親会社の所有者に
帰属する純利益
[億円]
(同)
2020年6月期通期627
(△11.7)
31.6
(△42.3)
42.2
(△26.3)
27.1
(△22.3)
2021年6月期通期568
(△9.4)
53.8
(70.1)
111
(163)
135
(400)
表2:グリー 2021年6月期通期経営成績

2021年6月期通期の業績は、前年同期比 減収増益で、売上高は1割減、営業利益は7割増、経常利益と純利益は2倍以上となっています。売上高が減少したのは少し寂しいですが、利益面は大幅伸長の業績です。

2020年6月期は前期比で減益だったのに比べ、今期は好調でした。

なお、2022年6月期通期会社予想は、

同社グループを取り巻く事業環境は短期的な変化が激しく、新規アプリゲームのリリース等による大きな業績変動が見込まれることから、業績見通しについて適正かつ合理的な数値の算出が困難であると判断し、連結業績予想の開示を見合わせています

【2021年6月期通期の状況、経営成績の要因】

我が国における個人のスマートフォン保有率は前年比1.7ポイント増の69.3%(出典:総務省「令和2年通信利用動向調査の結果」)と伸びるとともに、2020年の国内ゲームアプリの市場規模も前年比8.4%増の1兆3,164億円(出典:株式会社角川アスキー総合研究所「ファミ通ゲーム白書 2021」)と成長しています。

しかしながら、国内外経済は新型コロナウイルス感染拡大により急速に悪化し、経済活動停滞の長期化も懸念され、予断を許さない状況となっています。

このような環境のもと、同社グループはゲーム、ライブエンターテインメント、広告・メディアの各領域で投資を行ってきました。

主力とするゲーム領域においては、引き続きブラウザゲームのコイン消費は減少していますが、既存のスマートフォン向けアプリゲームの長期運営体制による収益安定化及び海外展開による収益力向上に取り組むと同時に、新規アプリゲームの開発を進めてきました。

ライブエンターテインメント領域においては、バーチャルライブ配信アプリ「REALITY」の機能強化やコンテンツ拡充を進め、また、広告・メディア領域においては、メディア力の強化とユーザー基盤の拡大を進めてきました。

なお、同社グループにおける新型コロナウイルスの影響は、広告・メディア領域において一部のメディアで影響を受けましたが、ゲーム領域及びライブエンターテインメント領域への影響は限定的でした。

当会計年度において、同社出資ファンドが保有株式を売却したことによる投資事業組合運用益5,483百万円を、営業外収益に計上し、また繰延税金資産の回収可能性を検討した結果、法人税等が減少しています。

【財政面の状況】

自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産)×100)は、2021年6月期末時点で84.6%と前期末(89.3%)から4.7ポイント減少しました。

自己資本比率の数値としては問題ないレベルです。(20%以上を安全圏内としています。)

また、2021年6月期通期のキャッシュ・フロー(以下、CF)の状況は、営業活動によるCF 17.7億円の収入、投資活動によるCF 92.9億円の収入の結果、営業活動によるCFと投資活動によるCFを合計したフリーCF※は111億円のプラスとなりました。

フリー・キャッシュ・フロー:プラスの場合、会社が使える資金があることを意味し、マイナスの場合、会社が自由に使うことができる資金が少ないことを意味する。

前期(2020年6月期)のフリーCF(プラス62.3億円)から48.3億円改善しています。

【今期(2022年6月期)の見通し】

同社グループは、引き続きモバイルを中心にインターネットを通じコンテンツやサービスの拡充を行うと共に国内外のユーザーの利用拡大、及び収益基盤の確立・強化に取り組む予定です。

アプリゲームは更なる事業の拡大を果たすべく、既存アプリゲームの継続的な強化を図りつつ、新規アプリゲームのリリースに向け開発を進め、海外展開は、引き続き日本国内で実績のあるタイトルの海外配信を拡大するとともに、新規タイトルの速やかな海外配信をする予定です。

ブラウザゲームは、高い利益率を維持しながら継続的な利益創出を目指しています。

メタバース領域(ライブエンターテインメント領域から改称)ではバーチャルライブ配信アプリ「REALITY」を中心とした規模拡大、

広告・メディア領域ではバーティカルメディア群の更なる成長を目指し取組む予定です。

また、投資・インキュベーション事業として、インターネット・IT領域を中心に投資するベンチャーキャピタルやスタートアップへの投資をする予定です。

株価指標

【10/1(金)終値時点の数値】

PERは、同業で時価総額が近い、DeNA(2432) 8.4倍、サイバーエージェント(4751) 27.4倍、コロプラ(3668) 34.1倍と比較すると、高い水準です。

配当は年利回り 1.7%で、東証1部の単純平均1.83%(10/1時点) と同水準です。

直近の配当金は、表3のようになっています。

年間10~14円となっていますが、年によってばらつきがあります。

決算期1株当たり
年間配当金(円)
配当性向(%)
2017年6月期1121.3
2018年6月期1470.0
2019年6月期1067.6
2020年6月期1084.8
2021年6月期12.520.3
表3:グリー 年間配当金推移

配当性向も一定ではなく、ばらついています。

この会社は、

株主への利益還元を重要な経営課題の一つと認識しており、事業の効率化や拡大に必要な内部留保の充実を勘案しながら、

その時々の経営成績、財務状態、それらの見通しに応じた適切な利益還元を実施することを基本方針としています。

配当は、DOE(純資産配当率)2%程度を確保しつつ、連結配当性向20%程度以上を目途として安定的かつ継続的に実施することにしています。

【直近の株価動向】

<週足チャート(直近2年間)>

出所:楽天証券サイト

株価は、昨年のコロナショック時の安値(341円)から、ずっと右肩上がりの上昇トレンドを継続しており、現在はその安値の2倍以上の値をつけています。

<週足チャート(直近3カ月間)>

出所:楽天証券サイト

直近の株価は、9/13に高値(710円)を付けた後は、日経平均とともに下落基調でしたが、

今回の大規模な自社株買いの発表の翌営業日(10/1)に、ストップ高比例配分(ザラ場中は寄付かず、大引けで売り株数と買い株数の比率に応じて株価を付ける方法)して直近の高値を上回ってきました

今後、この710円程度の値をキープできるかどうかがポイントです。

まとめ

【業績】

【株主還元】

【流動性・自社株買い数量】

【株価モメンタム】

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐
配当を含む株主還元⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐
自社株買い数量⭐⭐⭐⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐(中立)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「見送り」

と判断しました。

直近は地合いが悪いだけに、押し目狙いでも良いかもしれませんね。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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