こんにちは!
一般的に黒字転換を見込んでいる会社は、株価が上がりやすいと言われています。そこで、前期赤字から今期黒字転換を見込んでいて、かつ高配当(予想利回り3%以上)銘柄をピックアップし、今買うべき銘柄なのか?事業内容や直近の経営状況、客観的な株価指標、株価モメンタム等をふまえ、総合的に分析しました。
今回は、東証1部から機械業種の日本ピストンリングです。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです!
どんな会社?
自動車関連製品(ピストンリング(自動車のエンジンに使用される部品)、バルブシート(同左)、その他自動車関連製品)と舶用・その他の製品の製造、販売をしている会社です。
主要取引先は、国内の主要な自動車メーカーと海外のGM、フォルクスワーゲン、アウディなどがあります。船舶用部品では、小松製作所やクボタなどです。
セグメント別では、「自動車関連製造事業」「舶用・その他製品事業」「その他」に分かれており、2021年3月期の売上高構成比は、
- 自動車関連製造事業 85.6%
- ピストンリング 49.9%
- バルブシート 17.5%
- その他自動車関連製品 18.2%
- 舶用・その他製品事業 4.8%
- その他 9.6%
となっており、8割以上が自動車関連でピストンリングが半分を占めています。
直近の経営状況
【前期(2021年3月期)の経営成績と今期(2022年3月期)の見通し】
決算期 | 売上高[百万円] (前年同期比) | 営業利益[百万円] (同) | 経常利益[百万円] (同) | 当期純利益[百万円] (同) |
2020年3月期通期実績 | 54,881 | 1,829 | 1,776 | 490 |
2021年3月期通期実績 | 45,276 (17.5%減) | △165 (-) | 355 (80.0%減) | △813 (-) |
2022年3月期通期会社予想 | 50,000 (10.4%増) | 2,100 (ー) | 2,100 (490%増) | 1,300 (-) |
前期の経営成績は、減収減益で利益面は、経常利益以外は小幅ながらも赤字を計上しました。
しかしながら、今期は増収増益で利益面は黒字転換の計画です。特に利益面は、前々期(2020年3月期)を上回る計画となっています。
前期実績の状況や要因としては、
自動車業界は、下半期において受注環境の改善が見られたものの、新型コロナウイルス感染症拡大による需要減少に加えて、車載半導体の供給不足による影響等を受け、世界の自動車生産台数は大幅に減少しました。
このような状況の中、当グループは自動車メーカーの各国での操業停止や減産等により売上高は減少し、損益面は、原価低減や固定費削減、業務効率化の効果等により下半期は黒字化したものの、上半期の落ち込みを補いきれなかったということです。
結果として、営業損失でしたが、経常利益は助成金収入の計上等により黒字を確保しています。親会社株主に帰属する当期純損失は、一時的な法人税等調整額の増加等により赤字となりました。
個別に見ていくと、
事業 | 売上高[億円] (前年同期比) | 営業利益[百万円] (前年同期比) |
自動車関連製品 | 387.7(18.1%減) | △24(営業利益 24.9億円) |
舶用・その他の製品 | 21.7(3.5%減) | 137(営業損失 213百万円) |
その他 (商品等の販売事業を含む) | 43.3(18.1%減) | 146(10.6%増) |
主力の自動車関連製品事業は、下半期において、受注環境の改善が見られたものの、新型コロナウイルス感染症拡大による需要減少や車載半導体の供給不足による影響等を受け、減収減益で営業赤字となっています。
自動車関連以外は、利益面は2020年3月期より伸びていますので、自動車関連事業が営業赤字になったことが痛かったですね。
【財政面】
自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)は、2021年3月期末時点で46.4%と前期末(46.9%)から0.5ポイント下がっていますが、問題ないレベルです。
2021年3月期のキャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フロー43.6億円の収入、投資活動によるキャッシュ・フロー34.9億円の支出の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フロー※は8.7億円のプラスとなりました。これは、前期末のフリー・キャッシュ・フロー(プラス0.6億円)から、8.1億改善しています。
※フリー・キャッシュ・フロー:プラスの場合、会社が使える資金があることを意味し、マイナスの場合、会社が自由に使うことができる資金が少ないことを意味する。
【今期の見通し(の会社コメント)】
当グループが関連する自動車業界は、一部の地域を除いて受注環境の改善が見られているが、車載半導体の供給不足による影響の継続を予想しています。
このような状況の中、当グループは2021年3月期通期決算発表と同時に公表された第八次中期経営計画のもとで、「Change as Chance ~変化の中にこそチャンスあり~」を基本方針とし、新型コロナウイルス感染症による影響からの業績回復だけでなく、全体最適なモノづくりシステムの構築、コア技術・製品によるソリューション提供型開発営業の推進、更には将来にむけた新製品事業開発・創出への取り組み等を進め、引き続き企業価値の向上に努めていく。ということです。
この2021年度~2023年度の3か年の「第八次中期経営計画」の数値目標として、下記を掲げています。
- 売上高 540億円以上(今期(2021年度)の計画は、500億円)
- 営業利益率 8%以上(同 4.2%)
- 非自動車エンジン売上高比率 15%以上
- CO2排出量 △25%(2013年度比)
売上高の目標はそれほど高くないという印象ですが、営業利益率8%以上は、今期計画の倍近くですので、こちらの目標は高いですね。
今後、エンジン車から電気自動車(電動車)にシフトしていく中で、いかにこの社会全体の方向性に沿って対応していくかがポイントです。
株価指標
7/16(金)終値時点の数値
- 株価:1,305円
- 時価総額:109.3億円
- PER:7.7倍
PERは、同業で時価総額が近い、リケン(6462) 6.7倍、TPR(6463) 7.7倍と比較すると、同水準となっています。
- PBR:0.34倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):26.2倍
- 年間配当金(会社予想):60円(年2回 9月 20円、3月 40円)、年間利回り:4.6%(配当性向 36.6%)
※直近5年間の配当金と配当性向は、以下のようになっています。
決算期 | 年間配当金(円) | 配当性向(%) |
2017年3月期 | 65 | 22.1 |
2018年3月期 | 70 | 25.2 |
2019年3月期 | 75 | 32.7 |
2020年3月期 | 75 | 125 |
2021年3月期 | 20 | ー(赤字) |
配当は、2020年3月期までは年々増配していたのですが、前期は赤字だったため減配となっています。
配当性向は、通常は20~40%となっており、安定した配当性向といえそうです。
会社の方針としては、
株主へ適切かつ安定的な利益配分を行うことを経営の重要政策の一つと位置づけており、業績の動向や将来の事業展開等を総合的に判断して実施するとしています。
週足チャート(直近2年間):
株価は、昨年のコロナショック前の水準(1,410円)を、先月(2021年6月)到達しています。
直近では、2021年年初から、右肩上がりの上昇基調で推移しています。
今後はこの好調さが続いて、先月の高値(1,517円)を上抜いていけば、一段高も期待できそうですね。
まとめ
【業績】
今期(2022年3月期)は、前期の営業赤字から脱却し黒字転換の計画であり、特に利益面は、前々期(2020年3月期)の実績以上の見通しとなっており、業績の期待感がある。
ただ主力製品である、ピストンリングやバルブシートはエンジン車向けであるため、今後の電気自走車の普及に合わせてどのように対応していき、今年度を初年度とする中期経営計画の目標を達成していくのか課題が残る。
【株主還元】
今期の配当年利回り(予定)は、4.6%となっており魅力的で、配当性向は過去の実績が20~40%となっており安定している。
【流動性】
直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は397百株、25日平均は776百株。流動性は少し低いレベル。
【株価モメンタム】
直近は半年ほど上昇基調で推移しており、直近の高値(6/4 1,517円)を上抜ければ一段高の展開もありうる。
以上をふまえ、
レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐) | |
業績 | ⭐⭐⭐ |
配当、株主優待を含む株主還元 | ⭐⭐⭐⭐ |
流動性 | ⭐⭐ |
株価モメンタム | ⭐⭐⭐⭐ |
総合判定 | ⭐⭐⭐(中立) |
と判断しました。
参考になればうれしいです!最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。