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【公募増資・売出(PO)は買いか?】東京産業(8070)

再生可能エネルギー

こんにちは!

直近で公募増資・売出(以下、PO)の実施を発表した銘柄に関して、POに応募して買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです!

既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
また、「売出」とは、「既に発行された有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込の勧誘のうち、均一の条件で50人以上の者を相手方として行う」ことをいい、通常は「公募」と「売出し」を合わせて「PO」と呼ばれます。
「新規公開株(IPO)」は未上場企業が直接金融市場からの資金調達や知名度・信用力の向上を目的として証券取引所に新規上場するために一般投資家に株式を取得してもらう行為であるのに対して、「公募・売出(PO)」は既に上場していて証券取引所での株式取引が行われている企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却などを目的として一般投資家に株式を取得してもらう行為であり、「新規公開株(IPO)」と「公募・売出(PO)」の違いを簡単にいえば、実施する企業が「未上場」か「既上場」かの違いといえます。

今回は、東証1部から卸売業種の東京産業です。

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POの概要

今回のPOは、公募増資ではなく、大株主から株が売り出される「売出」です。売出価格決定期間や受渡期日、売出数量は以下です。

ただし、どの証券会社でも購入できるわけでなく、主幹事会社(今回は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券)をはじめ、引受人の証券会社で購入申込可能です。(ちなみに、私が口座開設しているSBI 証券、楽天証券ともに取扱い無しです。)ご自身が開設している証券口座をチェックしてくださいね💖

早ければ、7/13(火)の夕刻に、会社側からの売出価格等のお知らせが適時開示であります。

売出価格等決定日2021/7/13(火)
受渡期日7/20(火)(7/13(火)発表)
売出数量普通株式 3,347,600 株
発行済み株数28,678,486株の約11.7%
売出数量(オーバーアロットメント(以下、OA)による)普通株式 502,000 株(上限:全く行われない場合もある)
※実施決定しました。(7/13(火)発表)
売出価格597円(7/13(火)発表)
ディスカウント率4.02%(7/13(火)発表)
申込単位数量100株
実施の目的株式持ち合いの解消、株主層の拡大、株式の分布状況の改善及び流動性の向上とともに、コーポレートガバナンス強化による株主価値の向上を目的としたもの

※大株主順位第2位の、三菱商事株式会社の保有株のほぼ全ての株が売り出される。

売出数量が、発行済み株数の約11.7%(OAを含めると13.4%)とかなりの数量になっています。

また、今回の売出の発表と同時に、自社株買い(上限:200万株、10億円)も発表されました。これは、株主還元を強化するということもあるのですが、この大量の株式の売出しに伴う、株式需給への影響を緩和するという観点で行われています。

この200万株の自社株買いを考慮して、上限の株数を差し引いても計1,849,600株(OA含む)で発行済み普通株式数の約6.4%ですので、大きな数量といわざるを得ません。

また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は約11,000百株、25日平均は約2,500百株ですので、流動性は高いレベルです。

どんな会社?

主に、各種機械・プラント・資材・工具・薬品などの国内販売している機械総合商社です。近年は、環境エネルギー関連に注力しています。

この他、不動産賃貸業もしています。

決算報告セグメントは、

に分かれています。

2021年3月期通期のセグメント別売上高構成比は、

となっており、電力関連機器の売上が半分以上を占めています。

直近の経営状況

【前期(2021年3月期)の経営成績と今期(2022年3月期)の見通し】

決算期売上高[百万円]
(前年同期比)
営業利益[百万円]
(同)
経常利益[百万円]
(同)
純利益[百万円]
(同)
2020年3月期実績98,6042,6962,9722,178
2021年3月期実績113,669(15.3%増)1,941(28.0%減)2,208(25.7%減)1,865(14.4%)
2022年3月期会社予想70,000(※)
(会計基準適用前)120,000
2,700(39.1%増)2,900(31.3%増)2,100(12.6%増)
※2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用するため、上記の連結業績予想は当該会計基準等を適用した後の金額となっており、当該基準適用前の2021年3月期の売上高の実績値に対する増減率は記載

前期は増収減益で、利益面は前期比約20~30%の落ち込みとなりました。しかしながら、期の会社予想は前々期(2020年3月期)並みの計画となって復活の見通しです。

セグメント別では、

<電力事業>

2020年3月期に受注した大口の保守案件が堅調に推移したため、売上高 644.8億円と前年度比 120.2億円増加(22.9%増)、営業利益 7.5億円となった。

<環境・化学・機械事業>

大口太陽光EPC(Engineering, Procurement, Construction:設計、調達、建設を含む、プロジェクトの建設工事請負契約)案件の引渡しが堅調に推移したため、売上高 435.4億円と前度比 37.7億円増加(9.5%増)、営業利益 10.8億円となった。

<生活産業事業>

新型コロナウィルス感染症拡大防止策による外出自粛や、レジ袋有料化による包装資材の需要減少を受け、売上高 55.5億円と前年度比 6.9億円減少(11.0%減)、営業利益 75百万円となった。

<その他>

東北支社が入居する賃貸用オフィスビルを売却した影響から、売上高 94百万円と前年度比 40百万円減少(29.7%減)、営業利益 44百万円となった。

主力の電力事業と環境・化学・機械事業の売上は増加しましたが、生活産業事業とその他は減少しています。

【財政面】

自己資本比率(自己資本(総資本-他人資本)÷総資産) ×100)は、2021年3月期末時点で37.1%と前期末(35.2%)から1.9ポイント上がっています。

2021年3月期のキャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フロー27.9億円の支出、投資活動によるキャッシュ・フロー10.1億円の収入の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フロー※は17.9億円のマイナスとなりました。これは、前期末のフリー・キャッシュ・フロー(マイナス32.1億円)から、14.2億円改善しています。

※フリー・キャッシュ・フロー:プラスの場合、会社が使える資金があることを意味し、マイナスの場合、会社が自由に使うことができる資金が少ないことを意味する。

【今期の見通し(の会社コメント)】

新型コロナウィルス感染症のワクチン普及推進などから、経済活動の持ち直し期待が高まるものの、より感染力が強い変異株の感染拡大懸念などから依然不透明な状況が続くと想定される。

このような環境下、コロナ禍による設備投資抑制の影響は予想されるものの、再生可能エネルギーへの積極的な関与など、環境への対応強化を中心に重点施策を着実に遂行することで、計画目標の達成を見込んでいる。

としています。

株価指標

7/6(火)終値時点の数値

PERは、同業で時価総額が近い、第一実業(8059) 9.1倍、西華産業(8061) 10.0倍と比較すると、やや低い水準となっています。

※直近5年間の配当金は、以下のようになっています。

決算期年間配当金(円)配当性向(%)
2017年3月期1535.2
2018年3月期1829.7
2019年3月期2030.9
2020年3月期2429.6
2021年3月期2637.7
※東京産業 年間配当金推移

配当は、直近では毎年連続増配しており、株主還元に厚い会社といえそうです。配当性向は、30~40%弱と安定しています。

週足チャート(直近2年間):

出所:楽天証券サイト

株価は、昨年のコロナショック前の水準を軽々と突破して、右肩上がりの上昇基調で推移してきました。直近では、600円近辺で落ち着いています。

日足チャート(直近3か月間):

出所:楽天証券サイト

直近では、600~620円程度でもみ合っていましたが、今回の売出と自社株買いを発表した翌営業日(7/6)に、出来高を伴い前日比7.9%高の656円と大きく上げています。

ただ、自社株買いの株数よりも売出の株数のほうが明らかに多い(最低でも130万株以上多い)ですので、この高値を維持するのか又は上昇が続くのかがポイントですね。

まとめ

業績】

前期の業績は増収減益だが、今期の利益面は、前々期(2020年3月期)並みの水準まで回復する見込み。

また、この会社では近年、再生可能エネルギー(太陽光発電等)関連事業に注力しており、この点も今後の業績が期待できる。

【株主還元】

配当は連続増配を続けており、今期の年利回りは4.0%で高い。配当性向は30~40%弱と安定している。

【流動性・売出数量】

直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は約11,000百株、25日平均は約2,500百株と流動性は高い。

売出数量は、自社株買いを売出と同時に実施して需給悪化を緩和させているが、明らかに売出株数のほうが多い(最低でも130万株以上多い)。さらに、自社株買いは、上限で200万株なので株価が高くなると、実際は200万株よりも相当数下振れする可能性。

【株価モメンタム】

週足では上昇基調で推移していたが、直近は600~620円でもみあいが続いていた。

自社株買いと売出を発表した翌営業日の7/6に、前日比8%近く上昇した株価水準を維持できるかが、今後のポイント。

以上のことから、

レベル(最低⭐~最高⭐⭐⭐⭐⭐)
業績⭐⭐⭐
配当を含む株主還元⭐⭐⭐⭐
株価モメンタム⭐⭐⭐
流動性⭐⭐⭐⭐
売出数量⭐⭐
総合判定⭐⭐⭐⭐(買い)
※「総合判定」=⭐4つ以上「買い」、⭐3つ「中立」、⭐2つ以下「不参加」

と判断しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。

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