直近で立会外分売の実施を発表した銘柄に関して、買った場合、利益を得ることができるのか?直近の経営状況や客観的な指標、株価モメンタム等を踏まえ、総合的に分析しました。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです!
- 立会外分売とは?
新規株主を増やすことを目的として、上場会社が大株主である銀行やオーナー経営者などの保有株を小口に分けて、証券取引所の立会外で不特定多数に売り出すこと。
取引開始前など取引時間外(=立会外)に売り出されることからこのように呼ばれる。
- 立会外分売の魅力
- 前日終値より安く購入可能
- 立会外分配における買付側の購入価格は確定値段(1本値)で、分売実施日の前日終値よりディスカウントされるのが一般的。過去の例では、約3~5%のディスカウントで実施されています。(ディスカウント率は取引所の規定により最大10%)
- 買付手数料はかからない
- 立会外分売による買付は、通常の立会時間内の取引と種類が異なるため一般的に手数料はかからない。(売却時には通常の手数料が発生)
- 即日売却OK
- 立会外分売で取得した株式は、実施日(買付当日)から売却することが可能
- 前日終値より安く購入可能
- デメリット:抽選で外れることもある
- 買い申し込みが多いと、抽選ではずれて購入できないこともある。
第11回目は、東証ジャスダックから建設業種のマサルです。
分売の概要
実施期間や株数は以下です。実施予定日は幅があり、実際の実施日と販売価格は、会社側が実施日前日に発表しますので前日にならないとわかりません。ただ、販売数量は決まっていて、最低100株単位で、最大1,000株まで購入できます。
早ければ、5/28(金)の夕刻に、会社側からの適時開示で実施日と分売価格のお知らせがありますので、チェックしてくださいね💖
分売実施予定日 | 2021/5/31(月)~2021/6/2(水) |
分売数量 | 45,000株 (発行済み株数901,151株の約5.0%) |
申込単位数量 | 100株 |
申込上限数量 | 1,000株 |
実施の目的 | 当社株式の分布状況の改善及び流動性の向上を図ることを目的として行う。 ※分配予定株式数の一部は当社の主要株主である株式会社 苅谷が、その保有する当社株式について売却する予定であり、約定結果によっては当社の「主要株主の異動」が発生する可能性がある。 |
分売株数が、発行済み株数の5.0%とかなりの数量という印象です。
また、この銘柄の直近の出来高(売買が成立した株式の数量)の5日平均は800株、25日平均が400株です。1日の取引量が1,000株以下とほとんどなく、流動性はかなり低いです。
事業内容
ビル修繕や改修工事、マンション・ビルのリニューアル工事、シーリング(気密性や防水性を高めるために、建物の継ぎ目やひび割れなどの隙間を充填すること)・防水工事を行っている会社です。
特にシーリング事業は、東京都内の超高層ビルのシーリング工事の7割を占めているトップ企業です。
事業セグメントは、「建設工事業」と「設備工事業」に分かれており、2021年9月期の売上高の構成比率は、
- 建設工事業 87.6%
- 設備工事業 12.4%
となっています。
直近の経営状況
2021年9月期2Q累計の経営成績は、
- 売上高 43.8億円(前年同期比 24.0%減)
- 営業利益 3.9億円(同 19.4%減)
- 経常利益 3.9億円(同 19.2%減)
- 親会社株主に帰属する四半期純利益 2.8億円(同 14.8%減)
となっており、減収減益で、減少率は2桁という結果となっています。
要因としては、今2Q累計期間の建築業界は大型案件の端境期に入り、首都圏の非居住用建物着工床面積が前年同期比で約5.7%減少したほか、コロナ禍の影響で改修工事等の建築投資が先送りになる等、業況は落ち込みました。一方、ゼネコン大手50社の建築受注は3月単月では対前年比大幅に改善し、半期ベースでは約5.8%増となりましたが、上半期トータルでは、減収減益の結果になっています。
また、売上高は、2Q累計予想から微増でしたが、利益面は、工事の採算性の向上や追加工事が増加したこと等により、個別業績及び子会社業績がともに改善して計画を大幅に超過して、減益幅が抑えられています。
3Q以降は、都心部の大型再開発案件が見込まれており回復基調となることが予想されていますが、東京都心5区の3月の空室率が5.42%と13ヶ月連続で上昇している他、人手不足による人件費高騰や受注競争激化による収益低下が懸念される等、先行き不透明な状況が続くと想定しています。
2021年9月期通期予想に対しての、2Q累計の進捗率は、
- 売上高 58.3%(通期計画 75億円)
- 営業利益 226%(約2.3倍)(同 1.7億円)
となっており、営業利益はすでに通期計画の2.3倍にまで達しています。通期の予想が低すぎたという見方もできますが、2Qまでの業績は順調といえます。今後の進捗に期待です!
財務面では、自己資本比率(自己資本(総資本ー他人資本)÷総資産 ×100)が、2020年9月期末時点の54.4%から、2021年9月期2Q末時点で59.2%と上がっています。これは、利益剰余金が1.7億円増加したためです。問題ないレベルです。
株価指標
5/28(金)終値時点の数値
- 株価:3,380円
- 時価総額:30.5億円
- PER:13.4倍
PERは、同業で時価総額が近い、高橋カーテンウォール(1994) 5.5倍と比較すると、高い水準となっています。
- PBR:0.68倍
- 信用倍率(信用買い残÷信用売り残):-(信用売り残無)
- 年間配当金(会社予想):50円(年1回 9月)、年間利回り:1.5%
配当金は、前期160円から今期50円へと大幅減配予想となっています。
この銘柄は株主優待があり、何と宝くじがいただけます。一攫千金も狙えます!?
- 9月のみ 200株以上で「年末ジャンボ宝くじ」10枚
- 3月のみ 600株以上で「サマージャンボ宝くじ」10枚
※直近5年間の配当金は、以下のようになっています。
決算期 | 年間配当金 |
2016年9月期 | 22円(実質110円) |
2017年9月期 | 16円(実質80円) |
2018年9月期 | 100円 |
2019年9月期 | 145円 |
2020年9月期 | 160円 |
2018年4月に5株→1株の株式併合をしていますので、2016年と2017年は実質金額は5倍で換算できます。
配当性向は、ここ数年30数%ですので、純利益により配当金を増減する方針のようです。とすると、今期会社予想に対して上半期の純利益は、通期計画をすでに超過していますので、予想よりは増える可能性は大いにあります。
実際、2020年9月期は、当初の会社配当予想は130円でしたが、期末になって業績が計画を上回るということで、30円増配し160円でした。同じようになると嬉しいですね!
週足チャート(2年間):
株価は、昨年のコロナショック前の水準をとうに突破して、現在は3,400円~3,600円ほどで落ち着いています。このレンジを上抜けるのか、下抜けるのかは今後の業績次第といえそうです。
まとめ
2021年9月期2Qの経営成績は、前期よりは落ち込んでいますが、通期計画を利益面では上期だけで超過しており、今後、業績の見通しがつけば、上方修正の可能性も大いにあります。
ただ、昨今のコロナ禍で見通しがつきにくい中、どうなるかは予断の許さないところです。
配当金予想は、前期の半分以下となっており減配ですが、下半期で利益を積み増してくれば、前期の期末になってからの増配修正があったように、今期も増配修正が考えられます。
株式の流動性の観点からは、市場での出来高が非常に少なく、売りたい時に売りたい価格で売れないという事態が発生する可能性があり、また今回の分売の数量が発行済み株式の約5%と多めですので、短期的な需給悪化で株価が下落する可能性があります。
以上の状況を踏まえ、業績△、配当△、流動性×ということで、今回の立会外分売は「中立」と判断させていただきます。
※株式投資の実際の売買は、自己判断、自己責任でお願いします。